瀬戸内海に浮かぶ神の島・宮島では、一年を通じて様々な祭礼や神事が執り行われています。平安時代から続く雅楽の調べ、海を舞台にした勇壮な船神事、そして火と祈りが織りなす大晦日の情景。これらの年中行事は、単なる観光イベントではなく、千年以上にわたって受け継がれてきた信仰と文化の結晶です。
厳島神社の年中行事は、日本の伝統文化を今に伝える貴重な文化遺産です。管絃祭や桃花祭をはじめとする主要な祭礼には、平清盛が都から持ち込んだ平安貴族の雅な文化が息づいています。また、鎮火祭のような地域の伝統行事には、島民たちの暮らしと信仰が深く結びついています。本記事では、宮島の年中行事を季節ごとに紹介しながら、それぞれの歴史的背景と文化的意義を詳しく解説していきます。

宮島の年間祭礼カレンダー
宮島では一年を通じて様々な祭礼や行事が執り行われています。以下に月別の主要な年中行事をまとめました。日程が旧暦の行事は年により変動しますので、詳細は厳島神社または宮島観光協会の公式サイトでご確認ください。
1月の祭礼・行事
1日|歳旦祭・御神衣献上式
時刻:午前0時(御神衣献上式)、午前5時(歳旦祭)
場所:厳島神社
新年を迎える最も重要な祭典。祭典後に舞楽「振鉾」が奉奏されます。
※厳島神社昇殿料300円が必要
2日|二日祭
時刻:午前8時30分(祭典)、午後1時(舞楽)
場所:厳島神社
舞楽「萬歳楽」「延喜楽」の2曲が奉奏されます。
※厳島神社昇殿料300円が必要
3日|元始祭
時刻:午前9時(祭典)、午後1時(舞楽)
場所:厳島神社
舞楽5曲(太平楽、狛鉾、胡徳楽、蘭陵王、納曽利)が奉奏される豪華な祭典。
※厳島神社昇殿料300円が必要
5日|地久祭
時刻:午前5時30分
場所:厳島神社
舞楽「抜頭」は「日の出の舞」とも呼ばれ、早朝の神秘的な雰囲気の中で奉奏されます。
※厳島神社昇殿料300円が必要
20日|百手祭(大元神社)
時刻:午前11時
場所:大元神社
的に向かって矢を射る勇壮な神事。五穀豊穣を祈願します。
2月の祭礼・行事
11日|紀元祭
時刻:午前9時
場所:厳島神社
23日|天長祭
時刻:午前9時
場所:厳島神社
天皇誕生日を祝う祭典。祭典後に舞楽が奉奏されます。
3月の祭礼・行事
15日〜4月3日|みやじま雛めぐり
場所:宮島町内各所(ピンクののぼり旗が目印)
江戸時代から伝わる豪華なお雛様を島内約70箇所で展示。宮島の春の風物詩です。
17日|祈年祭
時刻:午前10時
場所:厳島神社
五穀豊穣を祈る重要な大祭。
20日|清盛神社祭
時刻:午前11時
場所:清盛神社
平清盛公の命日に行われる例祭。正午より厳島神社高舞台で舞楽が1曲奉奏されます。
23日(2025年)|宮島清盛まつり
時刻:午後1時〜3時30分
場所:宮島桟橋前広場〜厳島神社〜清盛神社
平家一門の厳島神社参詣行列を再現した仮装行列。春の一大イベント。
4月の祭礼・行事
15日|桃花祭
時刻:午後5時
場所:厳島神社
桃の花を供える春の大祭。舞楽10曲が夕刻から夜にかけて奉奏される華やかな祭典。
※厳島神社昇殿料300円が必要
15日|大聖院火渡り式(春季大祭)
時刻:午前11時〜午後3時
場所:大聖院
約1200年間燃え続ける「消えずの霊火」から点火。素足で火の上を渡り無病息災を祈願。
参加費:火渡り参加は別途必要
16日〜18日|桃花祭御神能
時刻:午前9時〜
場所:厳島神社能舞台
全国から能楽師が集まり、厳島神社伝来の能装束で演能。初日と2日目は「翁」あり。
※厳島神社昇殿料300円が必要
5月の祭礼・行事
旧暦5月5日|地御前神社祭
時刻:午後2時
場所:地御前神社
流鏑馬が行われる勇壮な祭典。舞楽も奉奏されます。
※2025年は5月31日
6月の祭礼・行事
17日|例祭
時刻:午前10時
場所:厳島神社
厳島神社の最も重要な大祭。
旧暦6月5日|市立祭
時刻:午前9時
場所:厳島神社
昔はこの日から「夏市」が始まっていた歴史ある祭典。舞楽5曲奉奏。
※2025年は6月29日
7月の祭礼・行事
旧暦6月17日|管絃祭
時刻:午後3時(発輦祭)〜深夜
場所:厳島神社〜地御前神社〜長浜神社
日本三大船神事の一つ。平清盛が始めた雅な海上渡御。約850年の歴史を誇る厳島神社最大の神事。
※2025年は7月11日
8月の祭礼・行事
10日|四万八千日観音大祭
場所:大聖院
この日お参りすると四万八千日分の功徳をいただけるとされる。
旧暦閏6月17日|居管絃祭
時刻:午後6時〜7時頃
場所:厳島神社高舞台
閏年のみ。高舞台を船に見立てて管絃を奏する。
※2025年は8月10日
17日・18日|宮島踊りの夕べ
時刻:午後7時30分〜9時
場所:御笠浜(大鳥居そば)
戦国時代から続く念仏踊り。観光客も参加可能な夏の風物詩。
24日(土日開催)|玉取祭
時刻:午前9時〜
場所:厳島神社前海上
海中に組んだ櫓の上の宝珠を奪い合う勇壮な神事。
9月の祭礼・行事
旧暦8月1日|たのもさん(四宮神社祭)
時刻:午後3時(祭典)、夜(民間行事)
場所:四宮神社〜海岸
五穀豊穣を祈願する国の重要無形民俗文化財。島民が作った「たのも船」を海に流す。
※2025年は9月22日
18日|豊国神社祭
時刻:午前10時
場所:豊国神社(千畳閣)
23日|秋分祭
時刻:午前9時
場所:厳島神社
10月の祭礼・行事
15日|菊花祭
時刻:午後5時
場所:厳島神社
菊の花を供える秋の大祭。舞楽10曲が秋の夕暮れから夜にかけて奉奏される。
※厳島神社昇殿料300円が必要
18日(2025年)|厳島水中花火大会
時刻:午後6時30分〜7時10分(予定)
場所:宮島沖
2019年以来6年ぶりに復活。世界遺産を背景にした水中花火。全席有料。
23日|三翁神社祭
時刻:午前10時
場所:三翁神社
祭典中に舞楽3曲が奉奏される。
11月の祭礼・行事
3日|明治祭
時刻:午前9時
場所:厳島神社
15日|大聖院火渡り式(秋季大祭)
時刻:午前11時〜午後3時
場所:大聖院
春と同様の火渡り神事。無病息災を祈願。
20日|荒胡子神社祭
時刻:午前11時
場所:荒胡子神社
23日|新嘗祭
時刻:午前10時
場所:厳島神社
収穫に感謝する重要な大祭。
12月の祭礼・行事
5日|御鎮座祭
時刻:午前10時
場所:厳島神社
厳島神社の創建を祝う大祭。
31日|鎮火祭
時刻:午後6時
場所:御笠浜
江戸時代から続く火難除けの神事。約1000本の松明が燃え上がる壮観な年越し行事。
31日|除夜祭
時刻:午後4時
場所:厳島神社
旧暦で行われる主な祭礼
以下の祭礼は旧暦で日程が決まるため、毎年開催日が変動します:
- 管絃祭(旧暦6月17日)- 7月〜8月
- 地御前神社祭(旧暦5月5日)- 5月〜6月
- 市立祭(旧暦6月5日)- 6月〜7月
- たのもさん(旧暦8月1日)- 8月〜9月
- 居管絃祭(旧暦閏6月17日)- 閏年のみ
各年の詳しい日程は宮島観光協会(TEL: 0829-44-2011)または厳島神社公式サイトでご確認ください。
観光客におすすめの祭礼TOP5
1. 管絃祭(旧暦6月17日)
平安絵巻を再現する日本三大船神事。御座船が海上を渡る雅な神事は必見。
2. 桃花祭・菊花祭(4月15日・10月15日)
各10曲の舞楽が奉奏される豪華な祭典。ライトアップされた境内での舞楽は幻想的。
3. 鎮火祭(12月31日)
大松明が燃え上がる勇壮な火祭り。年越しの特別な体験ができる。
4. 宮島踊りの夕べ(8月17日・18日)
観光客も参加できる伝統的な盆踊り。大鳥居をバックに踊る体験は思い出に。
5. みやじま雛めぐり(3月15日〜4月3日)
島内約70箇所で歴史あるお雛様を展示。春の宮島散策が楽しめる。
宮島の年中行事の歴史的背景
平安時代に遡る祭礼の起源
宮島の年中行事の多くは、平安時代末期に平清盛が厳島神社を崇敬し、社殿を造営した頃に始まりました。清盛は安芸守として赴任した久安2年(1146年)から厳島神社を深く信仰し、仁安3年(1168年)には現在の壮麗な海上社殿を完成させました。この過程で、都の雅な文化が宮島に持ち込まれ、管絃祭や舞楽などの年中行事が確立されていきました。
平清盛が始めた管絃祭は、平安貴族が池や河川で楽しんでいた「管絃の遊び」を神事として取り入れたものです。都の優雅な遊びが、瀬戸内海という雄大な舞台で神々を慰める神事へと昇華されました。この時代に整えられた祭礼の基本形式は、現代まで850年以上にわたって守り伝えられています。
中世から近世への継承と発展
平家滅亡後も、宮島の祭礼は途絶えることなく継承されました。鎌倉時代から室町時代にかけて、厳島神社は全国の武士たちの崇敬を集め、祭礼も継続して執り行われました。戦国時代には毛利元就が厳島の戦いで勝利した後、永禄6年(1563年)から能を奉納するなど、新たな芸能文化も加わりました。
江戸時代に入ると、宮島は芸州広島藩の管轄となり、浅野氏の保護のもとで祭礼がさらに充実していきました。この時期に、鎮火祭のような地域に根ざした民俗行事も定着し、神社の祭礼と地域の年中行事が融合した独特の祭礼文化が形成されました。春・夏・秋の三期市が立つなど、祭礼と商業が結びついた賑わいも生まれました。
明治維新と祭礼の変容
明治維新による神仏分離は、宮島の年中行事にも大きな影響を与えました。それまで山伏が取り仕切っていた鎮火祭は、明治以降に厳島神社の行事となりました。また、祭典の日程が新暦に移行し、春の大宮祭が「桃花祭」と改称されるなど、近代化に伴う変化も生じました。
しかし、こうした変化の中でも、祭礼の本質的な部分は守られました。舞楽の伝統は途切れることなく継承され、管絃祭も旧暦で執り行われ続けています。明治8年(1875年)には現在の大鳥居が再建され、昭和から平成、令和へと時代が移り変わる中でも、宮島の祭礼は伝統を保ちながら現代に受け継がれています。
四季を彩る主要祭礼
新年を彩る正月行事と舞楽奉奏
宮島の一年は、大晦日の鎮火祭から始まります。12月31日午後6時、江戸時代から続く火難除けの神事として、御笠浜で大小約1000本の松明が燃え上がります。かつて「晦日山伏」と呼ばれ山伏が執り行っていたこの祭りは、明治以降に厳島神社の行事となりました。島民たちが大松明を担いで「松明、ヨイヨイ」の掛け声とともに練り歩く様子は勇壮で、一年の締めくくりにふさわしい情景を作り出します。
元日には午前0時に厳島神社が開門し、歳旦祭が執り行われます。祭典後には舞楽が1曲奉奏され、新しい年の幕開けを祝います。続く1月2日の二日祭では萬歳楽と延喜楽の2曲、1月3日の元始祭では太平楽など5曲が奉奏されるなど、正月三が日は連日舞楽を楽しむことができます。これらの舞楽は平清盛が大阪四天王寺から伝えたもので、12世紀後期から現代まで伝承されている貴重な伝統芸能です。
1月20日には百手祭が執り行われます。厳島神社の御弓始と大元神社の百手(的射の行事)が一緒になった神事で、祭典の途中で的に向かって矢を射る勇壮な儀式が見られます。正月の一連の行事は、一年の平安と五穀豊穣を祈る大切な祭礼として、島民と参拝者に親しまれています。
春の桃花祭と御神能
4月15日に執り行われる桃花祭は、桃の花を御祭神に供える春の大祭です。午後5時から始まる祭典では、厳島神社の高舞台で振鉾、萬歳楽、延喜楽、桃李花、一曲、蘇利古、散手、貴徳、蘭陵王、納曽利、長慶子の全10曲の舞楽が奉奏されます。夕刻から夜にかけて行われる舞楽は、ライトアップされた大鳥居を背景に幻想的な雰囲気を醸し出します。
桃花祭の翌日4月16日から3日間は、桃花祭御神能が奉納されます。厳島の能は、弘治元年(1555年)の厳島の戦いで勝利した毛利元就が、永禄6年(1563年)から度々奉納したことに始まります。永禄11年(1568年)には観世大夫が下向し、社殿や棚守房顕の屋敷で演能が行われたと『房顕記』に記されています。現在も全国から能楽師や狂言師が集まり、厳島神社に伝わる能衣装と面を身に着けて様々な演目を演じています。

夏の管絃祭─日本三大船神事
旧暦6月17日に執り行われる管絃祭は、厳島神社最大の神事であり、大阪の天神祭、松江のホーランエンヤとともに日本三大船神事の一つに数えられています。平清盛が始めたとされるこの祭りは、平安貴族の「管絃の遊び」を神事として取り入れたもので、850年以上の歴史を持ちます。
旧暦6月17日が選ばれた理由は、潮位と月の美しさにあります。この日の夜は潮が高く御座船が往来しやすく、満月に近い状態で辺りが明るく美しい条件が整っています。また、夏で潮が高い日は他にもありますが、台風のリスクを避けた結果、この日が最適とされました。
午後3時に厳島神社本殿で発輦祭が行われた後、御神体を乗せた御座船が大鳥居沖から対岸の地御前神社へと出御します。かつて宮島は「神の島」として人が住むことが許されず、神社奉仕者も対岸から船で往復していました。その名残として、管絃祭では厳島神社から地御前神社を経由し、長浜神社、大元神社を巡って還御する形式となっています。
管絃祭のクライマックスは、深夜に厳島神社へ戻った御座船が、回廊の狭い枡形で三回転しながら管絃を奉奏する「船体回し」です。篝火や提灯に照らされた御座船が、雅楽の調べとともに優雅に回転する様子は、まさに平安絵巻そのものです。和船三艘を組み合わせた御座船を狭い場所で回転させる技術は、代々受け継がれてきた船頭たちの熟練の技の結晶です。
秋の菊花祭と民俗行事
10月15日の菊花祭では、桃花祭と同様に高舞台で全10曲の舞楽が奉奏されます。秋の夕暮れから夜にかけて行われる舞楽は、春とはまた違った趣があり、参拝者を魅了します。菊花祭は菊の花を御祭神に供える祭典で、秋の実りに感謝する意味も込められています。
旧暦8月1日(八朔の日)には、四宮神社祭「たのもさん」が執り行われます。島民たちが五穀豊穣を祈願して作った「たのも船」を紅葉谷の四宮神社に集め、御祓いを受けた後に海に流す民俗行事です。この行事は国の重要無形民俗文化財に指定されており、宮島の人々の暮らしと信仰が結びついた貴重な伝統として守られています。
8月には宮島踊りの夕べも開催されます。戦国時代より伝わる幽玄な念仏踊り「宮島踊り」が、大鳥居そばの御笠浜で二夜続けて行われます。こうした夏から秋にかけての行事は、島民たちが一年の豊作と平安に感謝し、先祖を供養する大切な機会となっています。

祭礼が継承してきた文化的意義
雅楽と舞楽の伝承
宮島の年中行事における最も重要な文化的要素の一つが、雅楽と舞楽の伝承です。舞楽は上古、インド、中国、朝鮮半島を経て日本に伝えられた音楽と舞いですが、発祥の地インドはもとよりベトナム、中国、朝鮮半島にも現在は残っていません。日本では宮内庁、大阪の四天王寺、そして宮島の厳島神社など数カ所に残るのみとなっており、世界的に見ても極めて貴重な文化遺産です。
平清盛が12世紀後期に大阪四天王寺から楽所を宮島に移して以来、蘭陵王、納曽利、萬歳楽、延喜楽など二十数曲が厳島神社に伝承されてきました。これらの舞楽は単なる芸能ではなく、神々を慰め、国の平安を祈る神聖な儀式です。年間を通じて様々な祭礼で舞楽が奉奏されることで、この貴重な伝統芸能が途切れることなく継承されています。
海と信仰が結びついた祭礼形式
宮島の年中行事の特徴は、瀬戸内海という自然環境を巧みに取り入れた祭礼形式にあります。管絃祭における海上渡御は、宮島が「神の島」として島全体が御神体と崇められていた古代の信仰形態を今に伝えています。潮位を考慮して旧暦で日程を定め、満月の美しさを祭礼に取り込む知恵は、自然と調和しながら生きてきた先人たちの姿勢を示しています。
また、対岸の地御前神社との往復という形式は、かつて島に人が住むことが許されなかった時代の名残であり、神域としての宮島の特別性を物語っています。海を舞台にした祭礼は、平安貴族の優雅な遊びを神事に昇華させた清盛の独創性と、瀬戸内海の海上交通の要衝という宮島の地理的特性が融合した結果です。
地域コミュニティと祭礼の関係
厳島神社の年中行事は、神社だけでなく島民たちの生活とも深く結びついています。鎮火祭では島民が大松明を担いで練り歩き、たのもさんでは各家庭で作ったたのも船を海に流します。これらの民俗行事は、地域コミュニティの結束を強め、世代を超えて伝統を継承する役割を果たしてきました。
管絃祭では町内の人々が御供船を出したり、ちょうちん行列で御座船を迎えたりするなど、島民全体が祭礼を支えています。こうした参加型の行事を通じて、若い世代に伝統文化が継承され、島の一体感が醸成されています。近年では観光客も増えていますが、祭礼の本質は島民たちの信仰と生活に根ざしたものであり続けています。
現代に受け継がれる祭礼の価値
宮島の年中行事は、令和の現代においても変わらぬ形で継承されています。世界遺産に登録された1996年以降、国内外から多くの観光客が訪れるようになりましたが、祭礼の本質的な部分は守られています。管絃祭は今も旧暦6月17日に執り行われ、舞楽は平安時代と同じ曲目が奉奏され、鎮火祭では島民たちが大松明を担いで火難除けを祈ります。
これらの祭礼が現代まで続いてきた背景には、宮島が常に信仰の対象であり続けてきたことがあります。平安時代の平清盛、戦国時代の毛利元就、江戸時代の浅野氏、そして現代の人々まで、時代を超えて多くの人々が厳島神社を崇敬し、祭礼を支えてきました。観光地化が進む中でも、祭礼の神聖さと伝統性は損なわれることなく保たれています。
現代における宮島の年中行事の価値は、単に伝統を守るということだけではありません。管絃祭や舞楽は、世界でも類を見ない文化遺産として、日本の伝統芸能の素晴らしさを国内外に発信する役割を担っています。また、鎮火祭やたのもさんのような民俗行事は、地域コミュニティの絆を強める機能を持ち、急速に変化する現代社会において、人と人とのつながりの大切さを再確認させてくれます。
さらに、旧暦を用いた日程設定や潮位を考慮した祭礼の執行は、自然のリズムに合わせた生活の知恵を示しています。月の満ち欠けや潮の干満という自然現象を祭礼に取り込む姿勢は、現代人が忘れがちな自然との調和の重要性を教えてくれます。こうした多層的な価値を持つ宮島の年中行事は、過去から未来へと継承すべき貴重な文化資源なのです。

よくある質問
管絃祭はいつ開催されますか?
管絃祭は毎年旧暦6月17日に執り行われます。新暦では7月から8月頃に当たりますが、年によって日付が変わります。旧暦6月17日が選ばれている理由は、この日の夜は潮が高く御座船が往来しやすく、満月に近い状態で月が美しいためです。詳しい日程は宮島観光協会の公式サイトで確認できます。
舞楽が見られる祭礼はいつですか?
舞楽は年間を通じて複数の祭礼で奉奏されます。主なものは歳旦祭(1月1日)、二日祭(1月2日)、元始祭(1月3日)、桃花祭(4月15日)、菊花祭(10月15日)などです。桃花祭と菊花祭では全10曲の舞楽が奉奏され、見応えがあります。厳島神社への昇殿料300円が必要です。
鎮火祭の小松明は購入できますか?
はい、購入できます。宮島町商工会青年部が製作した小松明は、12月中旬より宮島町商工会で販売されています。また、12月31日の16時から17時頃には宮島桟橋でも販売されます。価格は1本1000円です。大松明から御神火をもらった小松明は、火難除けのお守りとして家庭の神棚や台所に飾ります。
桃花祭御神能とはどのような行事ですか?
桃花祭御神能は、桃花祭の翌日4月16日から3日間、厳島神社の能舞台で奉納される能と狂言の公演です。全国から能楽師や狂言師が集まり、厳島神社に伝わる能衣装と面を身に着けて演じます。初日と2日目は最初に翁が演じられ、3日間とも五番能が演能されます。厳島神社の昇殿料300円で観覧できます。
たのもさんとはどのような行事ですか?
たのもさんは旧暦8月1日(八朔の日)に執り行われる民俗行事で、正式には四宮神社祭といいます。島民たちが五穀豊穣を祈願して「たのも船」という小舟を作り、紅葉谷の四宮神社に集めて御祓いを受けた後、海に流します。国の重要無形民俗文化財に指定されている伝統行事です。
年中行事は観光客も見学できますか?
はい、ほとんどの年中行事は観光客も自由に見学できます。管絃祭や鎮火祭などの屋外行事は自由に観覧できます。舞楽奉奏がある祭礼は厳島神社への昇殿料(大人300円)が必要ですが、高舞台での舞楽を間近で見ることができます。ただし、三脚や脚立の使用、ドローン撮影は禁止されています。
祭礼の日は混雑しますか?
管絃祭や桃花祭などの主要な祭礼の日は多くの参拝者が訪れます。特に管絃祭の日は約1万5千人の観光客が訪れるため、フェリーや宮島口の駐車場が混雑します。大晦日から元日にかけても初詣客で混雑しますが、臨時フェリーが運航されます。混雑を避けたい場合は、早めの時間帯に到着することをおすすめします。
まとめ
宮島の年中行事は、平安時代から現代まで850年以上にわたって継承されてきた貴重な文化遺産です。平清盛が始めた管絃祭は日本三大船神事の一つとして、毎年旧暦6月17日に雄大な海上渡御が繰り広げられています。桃花祭や菊花祭では平安時代から伝わる舞楽が奉奏され、その優雅な姿は参拝者を魅了し続けています。
また、大晦日の鎮火祭や旧暦8月1日のたのもさんなど、島民の暮らしと信仰が結びついた民俗行事も大切に守られています。これらの年中行事は、単なる観光イベントではなく、神々への信仰、自然との調和、地域コミュニティの絆を体現するものです。世界遺産に登録され、国内外から注目を集める中でも、祭礼の本質は変わることなく受け継がれています。
現代においても、旧暦を用いた日程設定や潮位を考慮した祭礼の執行は、自然のリズムに合わせた生活の知恵を示しています。宮島の年中行事を実際に見学することで、日本の伝統文化の奥深さと、それを千年以上守り続けてきた人々の努力を肌で感じることができるでしょう。四季折々の祭礼が織りなす宮島の文化的風景は、過去から未来へと継承すべき貴重な財産なのです。