宮島と厳島(いつくしま)は同じ島です。地図に載る正式な島の名前が「厳島」、江戸時代から広まった呼び名が「宮島」で、神社の名前は「厳島神社(いつくしまじんじゃ)」です。「宮島」は「お宮(神社)のある島」という意味で、ほかの宮島と区別するため「安芸(あき)の宮島」とも呼ばれます。住所は広島県廿日市市宮島町です。
神社の正式な表記は、旧字体を使った「嚴島神社」です。「厳」と「嚴」は同じ字の新字体と旧字体で、どちらも「いつくしま」と読みます。読み方を表にまとめました。
| 表記 | 読み方 | 何を指すか |
|---|---|---|
| 厳島 | いつくしま | 島の正式な名前(国土地理院の地図) |
| 宮島 | みやじま | 島の通称。「お宮のある島」 |
| 安芸の宮島 | あきのみやじま | 安芸国(広島県西部)の宮島。日本三景の一つとしての呼び名 |
| 厳島神社 | いつくしまじんじゃ | 島にある神社。一般に使われる表記 |
| 嚴島神社 | いつくしまじんじゃ | 神社の正式な表記(「嚴」は「厳」の旧字体) |
| Itsukushima | イツクシマ | 世界遺産の登録名「Itsukushima Shinto Shrine」 |

「宮島」と「厳島」の名前の歴史をたどる
古代から続く「厳島」という呼び方
「厳島」は、古くから使われてきた島の名前です。神社の始まりは推古天皇元年(593年)と伝わります。
「厳島」の名前の由来については、複数の説が伝えられています。最も有力とされるのは、「イツク」という古い言葉から来ているという説です。「イツク」とは「心身の穢れ(けがれ)を除き、身を清めて神に仕える」という意味を持つ言葉で、まさに島全体が神聖な場所として崇められていたことを表しています。
また、厳島神社の主祭神である市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)の「イチキシマ」が「イツクシマ」に転訛(てんか)したという説も有力です。いずれにしても、古代から島そのものが神として信仰の対象とされており、人が住むことすら許されない神聖な場所だったのです。
江戸時代から親しまれた「宮島」の名前
一方、「宮島」という呼び方が広まったのは、江戸時代に入ってからのことです。平安時代末期の源通親による紀行文『高倉院嚴島御幸記』に「宮島」の名前が現れていますが、一般的に広まったのは厳島合戦(1555年)後、特に江戸時代初期に広島藩が宮島を藩直轄地に定めてからでした。
「宮島」という名前は、まさに文字通り「お宮(厳島神社)がある島」という意味で名付けられました。江戸時代に入ると、伊勢神宮への参拝ブーム(お伊勢参り)の余波で、厳島神社への参拝客も急激に増加しました。参拝客たちが「神社のある島」として親しみを込めて「宮島」と呼ぶようになり、次第にこの呼び方が定着していったのです。
ただし、同名の地名が他にも存在したため、区別するために「安芸の宮島」と呼ばれることが多くありました。安芸とは現在の広島県西部を指す旧国名で、この表現によって瀬戸内海の名勝として特別な地位を確立していきました。
▷ 「厳島」「宮島」の呼び名が生まれた時代背景は宮島の歴史完全ガイドで詳しく解説しています。
正式名称と通称はどう使い分けられている?
国土地理院の地図では「厳島」が正式表記
現在、国土地理院が発行する公式な地図では、この島の名前は「厳島」と表記されています。これが地理的・行政的に正式な島の名称となっているのです。国土地理院は日本の地図作成を担う国の機関で、全国の地名や地形を正確に記録・管理しており、その公式見解では「厳島」が正しい島名とされています。
学術的な文献や公文書においても、多くの場合「厳島」という表記が使用されます。考古学的調査報告書、歴史学の研究論文、文化財保護に関する公的文書などでは、正式名称としての「厳島」が採用されているのです。これは学問的な正確性を重視する分野では、公式な地名表記を使用することが原則となっているためです。
行政と観光での使い分けパターン
興味深いことに、行政上の扱いでも「厳島」と「宮島」の使い分けが見られます。1889年(明治22年)の町制施行時には「厳島町」という名前でしたが、第二次世界大戦後の1950年(昭和25年)には「宮島町」に変更されました。現在は廿日市市に合併されて「廿日市市宮島町」という住所表記になっています。
観光業界では「宮島」という呼び方が圧倒的に多く使用されています。これは「宮島」の方が親しみやすく、覚えやすいことが理由の一つです。観光パンフレット、ホテルの名称、旅行会社のツアー名などでは「宮島」が使われることがほとんどです。ただし、歴史の長さや荘厳さを演出したい場合には「厳島」が使用されることもあります。

神社の正式名称は「嚴島神社」
厳島神社については、正式な表記は旧字体を使った「嚴島神社」となっています。これは神社としての格式と伝統を重んじた表記で、公式文書や重要な場面では必ずこの字体が使用されます。ただし、一般的には新字体の「厳島神社」も広く使われており、どちらも正しい表記として認められています。
神社の社格や歴史的価値を考慮すると、「嚴島神社」という表記には特別な意味があります。推古天皇元年(593年)の創建以来、1400年以上にわたって人々の信仰を集め続けてきた神社の威厳と格式を表現する表記なのです。
▷ 厳島神社の社殿が歩んできた歴史は厳島神社の建築史で詳しく解説しています。
現代における呼び方の意味と影響
地元の人々はどちらを使っているの?
地元の住民の間では、実際のところ両方の呼び方が自然に使い分けられています。日常的な会話では「宮島」が使われることが多く、特に観光客との会話や商売の場面では「宮島」が主流です。一方、神事や伝統行事、格式のある場面では「厳島」という呼び方が選ばれることが多くあります。
興味深いことに、地元の商店や旅館などの屋号には「宮島」を使用することが多く、「宮島○○旅館」「宮島○○商店」といった具合に親しみやすさを重視した命名が見られます。一方で、歴史ある寺社や文化的施設では「厳島」を使用する傾向があり、その場所が持つ格式や伝統を表現しています。
国際的な知名度と表記の統一
国際的な場面では、統一した表記が重要な課題となっています。1996年のユネスコ世界文化遺産登録では「Itsukushima Shinto Shrine」として登録されており、国際的には「Itsukushima」が正式な表記となっています。しかし、観光プロモーションでは「Miyajima」の方が覚えやすく親しみやすいという理由で併用されることが多くあります。
外国人観光客向けの案内では、「Miyajima (Itsukushima)」のように両方を併記することで、正確性と親しみやすさの両方を確保する工夫が見られます。これにより、訪問者が混乱することなく、島の正式名称と通称の両方を理解できるようになっています。

▷ 世界遺産としての評価と保護の取り組みは世界遺産としての宮島で詳しく解説しています。
よくある質問
厳島神社の読み方は?
「いつくしまじんじゃ」です。正式な表記は旧字体の「嚴島神社」で、読み方は同じです。
厳島神社の漢字は?「嚴」と「厳」はどう違うのですか?
同じ字の旧字体(嚴)と新字体(厳)です。神社は正式な名前に旧字体の「嚴島神社」を使い、一般には新字体の「厳島神社」も広く使われています。どちらも正しい表記です。
宮島と厳島、どっちが正しいのですか?
どちらも正しく、同じ島を指します。地図に載る正式な島の名前は「厳島」、広く使われる呼び名が「宮島」です。住所は「廿日市市宮島町」で、観光の案内も「宮島」がほとんどです。
「安芸の宮島」の読み方と意味は?
「あきのみやじま」です。安芸は広島県西部の昔の国の名前で、ほかの土地の宮島と区別するためにこう呼ばれてきました。松島・天橋立と並ぶ日本三景の一つです。
「いつくしま」という名前の由来は?
神に仕えるために身を清めることを表す古い言葉「いつく(斎く)」から、「神を斎き祀る島」という意味だとする説が有力です。主祭神の市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)の名から転じたという説もあります。
厳島神社の別名は?
古い記録では「伊都岐島(いつきしま)神社」とも書かれ、平安時代の『延喜式』神名帳には「伊都伎嶋神社」と載っています。いまも大鳥居の扁額は、沖側が「嚴嶋神社」、神社側が「伊都岐島神社」です。また、安芸国(いまの広島県西部)でいちばん格の高い神社として「安芸国一宮(あきのくにいちのみや)」とも呼ばれます。
厳島神社の創建は聖徳太子によるものですか?
いいえ。社伝では、推古天皇元年(593年)にこの地の豪族・佐伯鞍職(さえきのくらもと)が神託を受けて社殿を建てたのが始まりと伝わります。聖徳太子が創建したという言い伝えはありません。推古天皇の時代は聖徳太子が政治を担った時代と重なるため、クイズなどで混同されやすいところです。いまの社殿の形は、仁安3年(1168年)に平清盛が整えたものです。
宮島・厳島のローマ字表記は?
宮島は「Miyajima」、厳島は「Itsukushima」、嚴島神社は「Itsukushima Shrine(Itsukushima-jinja)」と書きます。英語の案内では島の名前として Miyajima がよく使われ、神社の名前には Itsukushima が使われます。
参考文献・出典
- Dive! Hiroshima:宮島をもっと深く知ろう
- 一般社団法人宮島観光協会:宮島の歴史
- Wikipedia:厳島
- Wikipedia:厳島神社
- 宮島町史編纂委員会『宮島町史 通史編』宮島町、1992年